ヨブ記を読むのはつらく、敬遠する思いが私の心に以前はありましたが、この歳になって、ヨブ記が語っている神の声に積極的に耳を傾けたいと思うようになりました。

 ヨブは、神を恐れる誠実な人で、非常に裕福であったと記されています。ウヅの地にヨブという名の人があった。そのひととなりは全く、かつ正しく、神を恐れ、悪に遠ざかった。彼に男の子七人と女の子三人があり、その家畜は羊七千頭、らくだ三千頭、牛五百くびき、雌ろば五百頭で、しもべも非常に多く、この人は東の人々のうちで最も大いなる者であった。そのむすこたちは、めいめい自分の日に、自分の家でふるまいを設け、その三人の姉妹をも招いて一緒に食い飲みするのを常とした。」(ヨブ記1:1-4)

 ところが、ある日突然、人生最悪の試練がヨブを襲います。彼は所有していた家畜を略奪と天災によって奪われ、子どもを失い、足の裏から頭の先まで悪性の腫物に悩まされるようになったのです。この知らせを聞いた友人たちはヨブを訪ねてきましたが、その悲惨な状況を見て、彼らは七日七夜何一つ声をかけることができませんでした。

 ヨブ記3章から、ヨブと3人の友人の対話がはじまります。ヨブを慰めるために来た友人たちでしたが、ヨブに対し、あなたには隠された罪があり苦難は罪に対する神の怒りであるから、悔い改めてゆるしを受けなさいと語りました。ヨブは傷つきながらも反論し、その論争が3回繰り返されました。

 そして、3人の友人との対話が平行線のまま終わると、エリフという人物が登場します。彼は初めからそばで対話を聞いていたのですが、一番年下だったので、発言をひかえて自分の語る時を待っていました。エリフは、3人がヨブに言い返せなくなったことに怒りを燃やして語り始めます。彼は延々と持論を語り続けました。

 エリフが語り終わると、ついに神が話し始めます。神は、まずヨブに向かって語られました。次に、3人の友人たちに向かって彼らを叱責する言葉を語られました。

 ところが、神はエリフに対しては何も言われませんでした。エリフは3人の友人たちよりも多くを語り、いかにも正しく賢そうなことを言っていたのに、いったいどこに行ってしまったのでしょうか。彼は、一番おそく登場して、いつの間にか消えてしまいました。私たちも、素晴らしい人生に見えたが、途中で姿がなくなり、どうなったかもわからない人生になってはまことに困ります。

 エリフは、自分は神をよく知っているかのように、また人生の苦難の理由をさも分かっているかのように語りました。一方ヨブは、私は神を知ることはできない、しかし神は私のために良いことを多く計画しておられ、その計画を必ず成し遂げてくださると告白しました。そして、神にゆだねれば、このような自分であっても、金のように価値あるものとしてくださると信じていました。これが、神がヨブを最後まで支えた理由であり、そうでなかったエリフは自分の主張だけをならべ、いつのまにか姿を消したのです。見よ、わたしが進んでも、彼を見ない。退いても、彼を認めることができない。左の方に尋ねても、会うことができない。右の方に向かっても、見ることができない。しかし彼はわたしの歩む道を知っておられる。彼がわたしを試みられるとき、わたしは金のように出て来るであろう。わたしの足は彼の歩みに堅く従った。わたしは彼の道を守って離れなかった。わたしは彼のくちびるの命令にそむかず、その口の言葉をわたしの胸にたくわえた。しかし彼は変ることはない。だれが彼をひるがえすことができようか。彼はその心の欲するところを行われるのだ。彼はわたしのために定めた事をなし遂げられる。そしてこのような事が多く彼の心にある。」(ヨブ記23:8-14)

 神は私たちが分析し究明する対象ではなく、数学の定理や公式のように説明されたり証明される方ではありません。神を信じることは、神をすべて理解することを意味しません。私たちはすべてを理解することはできないのです。なぜ不幸になるのか、なぜ病気になるのか、なぜ一生懸命しているのにうまくいかないのか、なぜ良い人が先に世を去るのか、なぜ世界は戦争を続けるのか、なぜ罪のない多くの子どもが死なければならないのか、なぜ自然災害があるのか。。。しかし、理解できないという、まさにそこが信仰の始まる場所なのです。人間の理解には限界があり、すべてを克服できないゆえに神は偉大であり愛なるお方なのです。

 ヨブ記には、三つの命題が記されています。①神は偉大である。②神は正しい。③神のふところにいなさい。すべて重要な命題ですが、その中で③神のふところにとどまりなさい、これが一番重要です。神のふところに入った人でも、苦難にあえば神から離れようとします。しかし、ヨブは違いました。ヨブは神を恨みはしましたが、決して離れようとしませんでした。泣いても神のふところで泣き、死んでも神様のふところで死のうとしました。苦難の前も、苦難の最中も、彼は変わることなく神のふところにいつづけたのです。このようなヨブに、神は以前の2倍の祝福を与え、その繁栄を回復されました。揺れ動き、不安だらけの、不確実な世界で、唯一確実な神様だけを信頼することを心から願います。

以上